ひかりちゃんの悲観的絵日記

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『無能なナナ』アニメ第6話感想(原作ネタバレ無し)

 この記事はアニメ『無能なナナ』第6話の感想記事です。原作ネタバレはありません。ただし、アニメ化された部分に関しての原作との比較コメントはありますので、原作未読の方はご注意ください。また、アニメ第6話自体のネタバレは含みます。

 今回はネクロマンサーのお話でした。犯行を隠したい殺人犯にとって、死体を操ってその死体の記憶を引き出せるネクロマンサーというのは厄介すぎますから、ナナとしては早急に排除する必要があります。思えば、ナナオも渋沢もまだ行方不明扱いで死体は出ていないわけで、死体が残るような殺し方はツネキチが初めてになります(お葬式シーンも初めて描かれました)。今後もずっと死体を出さないような殺し方をするのは難しいでしょうから、ナナの次のターゲットはネクロマンサーにならざるをえません。

 そのネクロマンシーの能力者ですが、今回はこの点に関してミスリードがありました。顔色が悪くていかにもネクロマンサー的な見た目をしたシンジと、元気キャラで怪力の能力の持ち主であってもおかしくなさそうなユウカという、キャラデザも利用したうまいミスリードでしたね。『ナナ』という作品は、ミスリード要素を小刻みに出すことで、短いスパンでも楽しんで観られるような工夫がなされていると思います。

 また、第5話の感想記事でも述べましたが、徐々にナナのパーソナリティに迫る描写が増えてきています。今回だとまず猫を助けるシーンがありますね。第3話で小屋を爆破したときにもナナは猫を保護していましたが、こうした描写から少なくとも、ナナが命を命とも思わないような殺人鬼であるわけではないと分かります。今回は猫の救出にキョウヤたちを連れていくことで、結果的に保健室から抜け出したことのカモフラージュにもなっていましたが、猫に気をとられなければおそらく保健室に戻るのは間に合っていただろうことを考えると(また、ナナが言うように、男子寮への道を通ったことがバレるというのもあり)、やはり猫を助けるのはリスクだったわけです。そのリスクを冒してまで助けるあたり、ナナに動物を思いやる気持ちがあるのは間違いなさそうです。

 他方で、ナナは能力者たちをためらいなく殺します。このあたりが、キョウヤも訝しんでいたように、ナナという人間の内面を分かりづらくさせています。これまでの描写からして、ナナは(1)能力者の推定殺害人数や、能力者は危険なバケモノだという「委員会」の言葉を鵜呑みにして殺人を行っており、また(2)ツネキチに対して「クズに遠慮はいらないな」と独白したり、ユウカに対して「悪い人間ではなさそうだが」と思うなど、殺害対象が善人なのか、それとも人類に害をなす存在なのか、気にしていることが伺えます。したがって、ナナは完全に倫理観が欠如した人間ではなく、殺人を行うのに何かしらの理由を必要としているということが推測できます。

 ラストの「わたしは人殺しかもしれないが…死者を弄んだりはしない」という言葉にもナナなりのモラルが表れていると考えられます。状況的にユウカへの挑発という面も多分にある台詞ですが、ナナがこれまでの殺人に際して殺した相手に手を合わせているという描写があるのも事実で、ナナが「死ねば仏」的な思想をもっていることは何となく予想がつきます。まあ死体で遊ぶより殺人の方が悪い気はしますが、悪人にも悪人なりのモラルがあるということでしょう。

 上記のような描写があったとはいえ、ナナはまだ能力者に対しては心を許していないようです。たとえばミチルはすぐに殺すかいずれ殺すかの二択でしたし(ちなみに「いずれ殺す」のシーンは私が『ナナ』の中で指折りで好きなシーンです)、ミチルに対して能力を使うなと言うシーンは、やはり本気で心配しているわけではなく、万一死者蘇生に成功したら困るからそう言っていたのでしょう。このあたり、ナナはまだ「冷酷な殺人鬼」というキャラづけを失っていません。

 話は変わりますが、キョウヤはナナの能力について疑っていたのではなかったのですかね? 第3話での「俺の能力も聞いてみればいい」とか「心が読めるのに知らなかったのか?」とか、今回の「俺の心の声とやらが聞こえているんだろう?」とかは、ナナの能力に疑いを抱いて探りを入れているのだと思っていましたが、モノローグではナナが心を読めることを信じていましたよね。ナナが「その人はどうしてキョウヤさんを襲ったんでしょうね?」と仕掛けるシーンは前後との繋がりも薄く、いまいち挿入の意図が分かりませんでした。

 それにしても、ナナはツネキチの件あたりから寝不足続きですね。まず自作自演で自分を刺した日があり、その(おそらく)次の日にツネキチに捕まって工作のために徹夜、その次の日はツネキチとの決戦・キョウヤの追及かわし・ミチルへの対処、その(おそらく)次の日は夜回りで、次の夜はユウカとの対決。昼間に保健室で休むというのはフェイクでしたが、本来本当に休んでもいいくらい重労働をやっていると思います。

 演技に関しては、今回もナナの表情豊かな声が聴けて良かったです。ツネキチを生き返らせようとしていたと言うミチルに対しての「は?」はどんな声になるのかと思っていましたが、思ったよりずっと裏返ったような声でした。ツネキチが蘇ったときの「なんだとー!?」は驚きすぎで面白かったですね。あとキョウヤに「死人の口を暴かれてはたまらないからな」と言われたところの苦笑いが好きです。ラストの「はい…そうですよ」から「死者を弄んだりはしない」へと徐々にドスの効いた声に変わっていく演技はカッコ良かったです。

 ユウカのキャストは富田美憂さんでしたね。富田さんはこのアニメの主題歌も歌われています。どうでもいいですが、富田さんは主題歌を歌ったアニメへの出演ノルマみたいなのってあるのでしょうか?

 以下、原作の対応箇所との比較コメントを含みます。未読の方はご注意ください。

 まず、小さい点ですが、キョウヤの「スプラッタ映画なら殺されているぞ。イチャついているカップルは真っ先にな」の「イチャついている~」はアニオリ台詞です。この部分が無いといまいち意味の分かりづらい発言になるので、ナイス補完だと思いました(あとネクロマンシーに関するモグオの台詞が説明口調になっていましたね)。また、ユウカがシンジとの思い出を語るときのフィルムと影絵の演出(原作に無い)も良かったですね。どうでもいいですが、私は人の話を聞きながら時系列や空間的な情景を把握するのが非常に苦手で、今回の伏線ポイントであろうユウカの話もなかなか把握できませんでした。

 また、「死者を弄んだりはしない」で切ったのはかなり意外でした。原作だとユウカがネクロマンサーだと発覚したところで第2巻が終わり、アニメもここで切っていればかなり強い引きになったとは思いますが、尺的にもう少し進めたかったというのがあるのでしょう。