ひかりちゃんの悲観的絵日記

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『無能なナナ』アニメ第10話感想

 この記事はアニメ『無能なナナ』第10話の感想記事です。原作のこの先の展開のネタバレはありませんが、既にアニメ化された箇所に関する原作との比較コメントは含むのでご注意ください。

 冒頭を除けば全体的に静かでゆったりとした印象の回でしたね。ストーリー的にもそうですし、原作と見比べてもカットされた台詞はほとんど無く、ひとつひとつのシーンにゆとりがあったと思います。

 冒頭に関してはまずモグオ強いなと思いました。原作でも大ゴマでしたが、アニメだと炎の描写がとても派手でしたね。第1話でもクラスの皆を巻き込みそうになってしまったモグオでしたが、精神的にしっかりしていれば本来とても強力な能力者なんだろうなという感じがします(前回にしても、跡形もなくスマホを燃やしてしまえるというのは相当な火力ですよね)。ナナが食らったダメージとしても作中最悪で、これまでに無いほど悲鳴がガチでした。モグオ(橘)がアニメだとどうなるのか楽しみでしたが、セイヤに比べるとやはりちょっと笑える感じになりますね。

 橘も「素敵な女の子だ」と言っていましたが、「先輩は佐々木ユウカには変身できないんですか?」の台詞はカッコ良かったですね。既に何度も描写されていることですが、これだけの逆境においてなお攻めの姿勢を保ち続けるナナの性格は前向きで良いなあと思います。どうでもいいですが、このあたりの月が原作だと完全な(?)半月なのに対してアニメではちょっと膨らんでいるのは何なんだろうと思いました。

 ストーリーとしては、ナナの過去の説明とナナがミチルに対して少しずつ心を開き始めていることの描写が絡み合っていて上手いなと思いました。過去が明かされることによって、これまでほとんど描かれてこなかったナナのパーソナリティが明らかになり、一気に人間味が増してきます。また、過去を語るというのはミチルに対して心を許していることの表れだったり、誰かと事情を共有したいという弱い心の表れだったりもすると思います。「こういうときのためにミチルを生かしておいているんだ」「この手の話は聞く者にとってはわかりやすくていい」あたりのモノローグは自分に言い聞かせているといった感じで、連日の過酷なタスクに疲れ、橘にも追い詰められ、精神的に余裕が無くなったところで、既に心を許しかけているミチルに話を聞いてもらいたいという気持ちが根底にはあるように見えます。(なお、ユウカのようにミチルにも裏があるはずだとナナが考えるシーンは、ユウカの件が地味に能力者に対する失望をナナに与えていたことが伺えて面白いですね。)

 ナナの過去については、同じ話を何回かに分けて出していって、徐々に詳細さが増してゆくという見せ方が巧みだと感じました。要約すれば「能力者に両親を殺された」という話で、この情報は最初に橘に話したときに既に出ているのですが、次に回想で父親の生首が出て、ミチルへの最初の語りで「夜中に強盗が入ってきて両親が殺された」というディティールが明らかになり、その後の回想で「ナナが窓の鍵を閉め忘れたことによって両親が殺された」という話になって、次のミチルへの語りで、幼少期のナナの性格描写も込みで、窓を閉め忘れた件についてより詳しい説明が与えられます。同じところを何度も重ね塗りしていくような出し方をすることによって、過去エピソードを強く印象づけることができますし、ひとつの話の中でも段々と過去話へ引き込まれていくようになっていて、よくできた構成だなと思いました。

 ミチルへの2回目の語りではBGMの使い方や大久保さんの演技が良かったですね。ちょっとまどマギっぽい、オスティナート感のあるBGMがずっと流れていて、幼少期のゲームに関する話から徐々に両親の殺害への話へと移行して行き、それを語るナナの声も段々強張っていって、BGMの終わりとともにナナを励ますミチルの毅然とした表情が描かれるという、完成度の高いシーンになっていると思いました。

 あと、ナナは根がガサツで、そうした面はいまだ抜けきっていないという描写も、ナナのキャラクターに味わい(?)をもたせていると思います。幼少期に関しては、片づけをしなかったり、夜中に勝手に出歩いたり、窓も閉めず、着替えもせずに寝たり、かなり奔放で雑な性格であることが描写されています。トラウマから戸締りや部屋の整理整頓はしっかりとやるようになりましたが、第1話や第2話の食事シーンで、割り箸の割り方が汚かったり、(渋沢に合わせた面があるにせよ)食べ方ががっついていたり、米粒を残したりなど、大雑把な性格が残っていることを伺わせる描写があります。こういう、幼少期の性格との断絶と連続性みたいなところがさりげなく描かれているのは面白いですね。他にも、ゲーム好きという面は現在でも頭の回転の速さに受け継がれていますが、幼少期は天真爛漫に遊んでいただけなのに対し、現在は殺人のトリックを考えることにその頭脳を使っているという対比があります。また、幼少期にひとり遊びに没頭していたというのも、今の「クラスの人気者」としてのナナを考えると示唆的ですね。

 最後のシーンに関してはまた次回という感じですが、キョウヤがクラスの信用を失った後にも何だかんだでリーダーシップを発揮していたり(前回のランチメイト募集は上手くいったのでしょうか)、モグオの表情が微妙にカッコいいといったことが印象に残りました。あとは、今回の事件に限って言えばナナが犯人ポジションでなくなるというのも新鮮で面白いですね。

 次回も楽しみです。もうかなり終盤で、残り3話でどういう感じにまとめるのか気になります。