ひかりちゃんの悲観的絵日記

絵日記要素はあるかもしれないしないかもしれない。

『無能なナナ』アニメ第13話感想

 この記事はアニメ『無能なナナ』第13話の感想記事です。原作のこの先の展開のネタバレはありませんが、既にアニメ化された箇所に関する原作との比較コメントは含むのでご注意ください。なお、直接的なことを言わずとも「原作を読んで先を知っている人間がこういうコメントをしている」ということ自体がある種のネタバレ的情報をもたらすということもあるかもしれませんので、そのあたりもご了承ください。

 アニメにとっては最終話ということで、大事なお話なのでどうなるか不安もありましたが、良かったですね。はしょったりもせず丁寧に描かれていて、声優陣の演技も素晴らしく、満足のいく最終回でした。

 先にお話について言うと、私は最初に原作でこのお話を読んだとき、なぜか「見えざる刃」編がこんなにバッドエンドだとは思っていなかったんですよね。後から考えるなら、ミチルの死亡フラグは立ちまくっていたし、作品の性格からしても何かしら悲劇が起こることは予想できたはずなのですが、私はミチルがナナを助けるシーンを読んでもまだミチルが死ぬと思っていなくて、ナナとミチルがお互いに助け合って「雨降って地固まる」的なエンドになると思っていました。なので最後のシーンはすごくショックだったし、これではナナがあまりに報われないということで、ナナのその後を見たくて、この漫画は追っていくぞと決めたのでした。そういう経緯もあって、今回のエピソードはとても思い入れのあるお話です。

 アニメを観て一番印象に残ったのは「早くしろこの馬鹿犬」からの一連のナナの台詞でした。せっかく築いた友情を壊すような悪態をついてナナがミチルに逃げるよう促すというシーンなのですが、大久保さんの演技が泣きそうな声になっていて、それが原作を読んだときのイメージを超えていたというところがあります。ここのナナは言行不一致というか、口ではミチルをどれだけ罵っていてもやっていることは命を賭してミチルを助けるということなので、それが本心からの台詞じゃないというのはまあ誰が見ても明らかなのですが、アニメだとそれ以前にナナの声音がミチルへの気持ちを全然隠せていなくて、ミチルを想う気持ちがミチルにストレートに伝わっている感じがして良かったです。絵に関してもアニオリでナナが涙を流すカットが一瞬入っていて、そこの表情も素晴らしかったですね。

 また、「許さないぞっ」の中原さんも良かったですね。普段のミチルとも、橘が化けていたミチルとも違った、毅然とした声が素敵でした。ミチルは最初迂闊にナナを信じすぎで、羽生・カオリ殺害事件のときはナナを庇ってキョウヤを糾弾するなど、真相を知っている読者からすれば愚かに見えさえするキャラクターとして出てきますが、「見えざる刃」編を通じて本当は色々なことを考えて動いていることが分かり、行動にも芯のある強い人だということが段々見えてきます。そしてこのシーンでは、ナナに守られるだけのか弱い存在ではなく、精神的にはひとりで鶴見川にも立ち向かえるような勇気のある面が描かれます。中原さんの演技はそうした文脈にマッチした力強いものだったと思います。

 鶴岡の藤原さんは先週は一言だけでしたが、今回は長台詞がありましたね。個人的に藤原さんはある程度三枚目というか、ユーモアのあるキャラのイメージが強かったので、藤原さんの鶴岡がどういう感じになるのかイメージできないところがありましたが、いい感じにねちっこい喋り方で鶴岡の邪悪さがよく表れていました。あととにかく声が良い。第2期があるとしても藤原さんの鶴岡が聴けないのはとても残念です。

 声優さんのお話繋がりで、この段落はちょっと横道です。最終話が最速で放送される12月27日のお昼に私は「ニコナナ」という最終回直前の特番を観ていたのですが、そこで大久保さんが鶴見川役の山谷祥生さんについてお話されていました。大久保さんと中原さんと山谷さんの揃う現場が数年前にあって、そのとき以来の共演で感慨深かったというお話でした(私は観ていないのですが、『一週間フレンズ。』のことのようですね。6年前なのでずいぶん昔です)。「ニコナナ」は最終話のネタバレNGでやっていたので、鶴見川が犯人だと言えない状況で大久保さんは話されていたわけですが(キャラ名も「子分C」となっていました)、第11-12話というよりは最終話を念頭に置かれていたのだろうなと思います。(鶴見川の声は第12話だとかわいくて、それが今回だと基本は同じ声だけど喋り方はゲスな感じになっていて面白かったです。)

 BGMの入れ方も良かったです。『ナナ』はBGMが少ない作品で、それは意図されたことのようですが、重要な場面ではしっかりBGMが仕事していますね。今回だと感動的な場面もそうだし、ミチルが鶴見川に追われるシーンなど、緊迫した場面でもBGMが雰囲気を作っていました。

 感想ハイライトはこんなところです。以下ではいつものように個別のシーンごとにコメントをつけていきます。

  • リバイバル」ってサブタイめちゃくちゃ良いですよね
    • これまで能力名やそれに関連する言葉でサブタイ縛ってきたのがここで活きる
    • 名前が変わっててミチルの能力が明確に進化したということ
  • 「お前が殺したんだ 認めろ」嫌らしい言い方が素敵
  • 「それでもナナしゃんのせいじゃないです!」のところは原作だとミチルが結構怖い顔をしていているのですが、アニメだと控え目(原作テイストを忠実に再現するとギャグっぽくなっちゃうかな)
    • 原作だとこのミチルに対してナナが「ひっ!」と怯えていてちょっと面白いのですが、アニメの声の出し方は自然な感じでした
  • 「これが……ミチルが連日浮かない顔をしていた答え?」実は悪い奴でした的なミスリードをしてきたこの作品で、ミチルは根っからの善人でしたという逆のミスリードが上手い
  • 「なにがあってもナナしゃんの味方です」ミチルはナナが殺人鬼だと知らないからこそ良くしてくれたという面はあるのだけど、この台詞を聴くと最終的に全部受け容れてくれたんじゃないかと希望がもてる
  • 孤独な幼少期のナナをミチルが救い出す描写は、ナナは大人びていてもその成長のある面は両親が殺された時点で止まってしまったのだということを表しているのかな
    • プレゼントのくだりで「おともだち」に対してどう接すれば良いのか分からず手探りなあたりもそんな感じがする
  • キョウヤに「好きな男でもできたのか?」と言われたり、プレゼントの枕を抱えて「今なにしてるかな」と頬を染めたり、恋心みたいなところあるよね
  • ナナとミチルがプレゼント交換し合うシーンは何か原作より森感が強かった
    • 「眠るたびにミチルちゃんのこと思い出しちゃいますね」つらい
  • 先輩に対するナナの生意気な後輩感好き
  • 実は敵に襲われるミチルをナナが助けに走るシーンはもうひとつあって、アニメだと第4話なんですが、あのときは(茶番なので)キョウヤを頼らなかったことを突っ込まれていたのに対し、今回はキョウヤに助けを求めていて、地味に対比っぽい
  • 鶴岡の電話に姿勢正しちゃうナナ好き
    • ここでナナが親を失った子どものための育英基金に報酬をあてようとしていること、自分の給料を親戚に振り込んでいることが分かり、地味に株が上がる
  • 「"人類の敵"が勝手に"人類の敵"と殺し合う 好都合じゃないか」全然そう思ってなさそうな表情が良い
  • 鶴見川がミチルを追うシーンは臨場感がある
  • 「彼女どこか薄汚いものを感じるんです」鶴見川のナナ評はある意味合っているのが皮肉
  • ナナがミチルを庇って刺されるところは間一髪って感じのリアルタイム感があって良かった
  • 鶴見川の登場シーンかっこいいですよね
    • 幽体っぽいうにょうにょのエフェクトも良い
    • 原作だとフウコと鶴見川の口調が同じなので、ぎりぎりまで「やはりフウコか?」と思わせておいての鶴見川というイケてる演出なんですが、アニメだと流石に声でバレる
  • ナイフの重量感が良い
    • 「いいナイフだな」ナナしゃんは敵を煽るときに持ち物を褒めがち
  • 「隙を作る」の内実が自分の首を切るように誘導することって身体張りすぎ
    • 最初は本当に何か策があるのかと思ってました
  • 実はナナからミチルへの最後の言葉は「お前みたいな偽善者はだいっきらいだっ!!」なのつらい
    • 原作だとミチルが死ぬところがやっぱり印象に残ったけど、アニメだと演技や作画が相まってこの台詞が一番良かったです
  • ミチルを逃がした後のナナの表情がかっこいい
  • ナナのピンチを救うキョウヤはベタだけど熱い
  • 一番余裕が無いときにキョウヤを頼ったり、キョウヤの判断に「さすがですね」と言ったり、ナナ→キョウヤの信頼が厚い描写が良い(自分が詰められた経験があるからこそ信頼できるのを知っている)
    • 「話が早いだろうという意味でですよ?」かわいい
  • ナナを疑いつつも心配するキョウヤ良い
  • 「くだらない能力者に無策で突っ込み」まさか無策だったとは……
  • 殺してきた能力者たちを振り返るのが時系列逆順になっていて走馬灯っぽくて良かった
  • 「パパ……ママ……」あたりのモノローグはどっちの声なのかなと思っていたけど裏ナナの声(まあこのあたりになると境界が曖昧なところある)
  • 原作だとナナの蘇生シーンでミチルが両足とも靴を履いているという作画ミス的なものがあるのですが、アニメだと片方脱げてましたね
  • 「ナナしゃんを返してくださいーーっ!!!」は最後の伸ばしをどう発音するのか気になっていた
    • 「さーい」だとギャグっぽいし「さいー」だと日本語の発音として不自然だし……、結果としては伸ばさないという選択
  • ED映像はカットだけどあの映像は最終話にこそ合いそう
  • ミチルを失ったナナが子どもっぽく「やだ」と繰り返すだけなのがつらい

 アニメシリーズの構成に関して、第5巻に少し入るだろうと思っていた原作勢の方も多いようですが、私は第8話を観たあたりで、第4巻ラストで終わるんだなと思いました(後出しジャンケン感がありますが、本当です)。私が1クールで構成考えろと言われたとしても多分ここで切ります。とにかく切れ目の無い作品なので、どこで切っても中途半端になってしまうのはそうで、それだったら一番大きな切れ目はミチルの死なのだからそこで終わらせるのが妥当ということになると思います。いや、「見えざる刃」編に限っても謎はまだ全部回収されていないのでそれにしてもキリが悪いだろうという話も分かるのですが、細かい謎を回収するためにミチルのシーンがラストでなくなってしまうというのは代償が大きい気がします。それだとナナとミチルの関係に収斂するというファーストシーズンの物語の軸がぶれてしまうように思うんですよね。というわけで第4巻ラストまでで1クールと決まった上でと考えると、各話のペース配分は良かったなという印象です。まず、原作のカットがほとんど無かったので、原作の忠実なアニメ化を目指しているとすればそれだけで構成としては成功でしょう。それに加え、各話の引きもしっかり作って、アニメ勢も次回を楽しみにできるような作りになっていたと思います。このあたり、私は不満は無いです。

 あとは第2期ですね。第2期さえあれば、「見えざる刃」編で急いだりアニオリでまとめたりしなかったことも活きてきます。原作ストックがまだ第2期をやれるほど無いですが、もう少し経てば貯まるはずです。商業的なことは分からないのですが、BDの売り上げはやっぱり大事なのでしょうか? 少しでも第2期の実現可能性を上げたいなと思い、珍しくBDを買いました。第1巻は入手し、それ以降も全巻予約済みです。全3巻というのが買いやすくて良いですね(全6巻とかだったら買っていなかったかも)。ちなみにBDプレイヤーは持っていなかったので『ナナ』のためにわざわざ買いました。第2期来てくれ~頼む~!

 というわけで『無能なナナ』最終話の感想でした。アニメでこの作品を知って、すごい勢いで原作を読み、毎週リアタイでアニメを観て、この3ヶ月とても楽しかったです。原作は本誌で追い続けますし、アニメ第2期も期待したいです。あと原作第6巻ネタで二次創作描きたいです。