ひかりちゃんの悲観的絵日記

絵日記要素はあるかもしれないしないかもしれない。

『無能なナナ』アニメ第5話感想(原作ネタバレ無し)

 この記事はアニメ『無能なナナ』第5話「能力者 VS 無能力者 PART 2」の感想記事です。第4話までを振り返った前回の記事とは異なり、原作ネタバレを含みませんので、アニメ勢の方でもご安心してお読みいただけます(リンク先の記事はネタバレ有ですのでご注意ください)。ただし、もちろんアニメ第5話自体のネタバレは含みます。

 あらすじをまとめることはしませんので、思いついたことを散発的に書いていきます。順に、

  1. アニメの構成に関すること(話の区切り方)
  2. ナナのパーソナリティ
  3. 未来は変わらないということ
  4. 好きポイント

について述べます。

アニメの構成に関すること(話の区切り方)

 「能力者 VS 無能力者 PART 2」というタイトルからも想像していましたが、VS ツネキチのお話は割とあっさり終わりました。第5話の後半ではキョウヤからの追及をいかにかわすかというところにストーリーの焦点が当たり、ラストはナナオ殺害現場の写真を見てしまったミチルに超怖い顔のナナが迫るという非常に強い引きで終わりました。

 この構成はかなり上手かったと思います。やはり、『ナナ』は速い展開と引きの強さで引っ張ってゆく側面が強い作品です。ツネキチ編でちょうど1話という区切り方も(全体の尺は度外視するなら)ありえますが、その場合だと話の見せ場がツネキチに集中してしまうし、区切りが良すぎて引きが弱くなる可能性があります。言ってしまえばツネキチというのはそんなにたいした敵ではないので、「ツネキチを倒したナナすごい!」という切り取り方だといまいち盛り上がらないように思われます。そこを、ツネキチエピソードを第4話の後半から第5話の途中までに置くことで、盛り上げポイントを複数作り、4→5と5→6の引きも強くするという、一石二鳥が狙えます。というわけでアニメでのツネキチ編の配置の仕方は非常に成功しているといえるのではないでしょうか。

ナナのパーソナリティ

 アニメ第3話あたりまでのナナは、いかに能力者を殺そうかと思索をめぐらす面ばかりが描かれ、パーソナリティに関する描写は多くありませんでした(数少ないそれらしき描写を拾うと、第3話で『人類少女』を好きな漫画だと言ったこと、同話で猫を助けたこと、第4話でミチルが善人である可能性について考えていたことなどでしょうか)。それに対してこの第5話では、未来の確定性を最後まで信じず、運命に抗おうとするという、主人公気質なナナの側面が描かれました。ツネキチが寝ている間に体育倉庫で仕込みをしていたナナは、「未来は本当に変わらないのか?」と問い、「運命などと気に入らない」と独白します。さらに、ツネキチを倒した後の「運命というものは常に人間の手に届くところにある」という台詞。また、「漫画の主人公はいつだって未来を変えてきた」と述べるキョウヤに対して「いいお友達になれそうです」と述べるシーン(第3話の『人類少女』に関する描写から見ても、ここはある程度素で言っていると思います)。これらの描写は自らの力で未来を変えていこうとするナナの前向きな性格を表現しています。

 実際、今回ナナがとった行動は、予知を鵜呑みにせず、限られた時間・手段の中で最善を尽くそうとするというものでした。振り返ってみれば、ナナはツネキチの家に泊まった晩に既に、ツネキチが死んでいる写真を見ているわけです。ここでナナがツネキチのような性格だったら、自らの勝利を確信して写真の状況が生じるのを悠々と待ったことでしょう。しかし、ナナはその後も(a)自撮り写真の細工、(b)風呂にいるツネキチを毒針で殺そうとする、(c)時計の針の細工、(d)体育倉庫において、写真にあった縄跳びではなく毒針を用意するなど、未来を変えるべく様々な手を打ちました。結局はすべてが写真の通りになり、「運命に抗おうとしたからこそナナは勝てた」とは言いづらい結末にはなりましたが、ナナのこうした努力を通じて、視聴者はこれまで不明だったナナのパーソナリティを垣間見ることができました。

 主人公が殺人者というこの作品では、主人公がある程度善人であるような作品に比べて主人公を好きになるのにハードルがあるかもしれません。ナナはどう頑張っても悪人なので、悪役なりの魅力を、ということになるでしょうが、今回ナナが見せたガッツのある側面はそうした魅力に数え入れられうるものだと思います。

未来は変わらないということ

 今回のエピソードでは、この手の予知能力が出てくるアニメには珍しく(?)、「予知された未来は変わらない」というルールがかなり厳密に支配していたように思います。ただ、ツネキチの予知は写真という非常に断片的な形でしかなされないので、予知を覆せないからといって、あらゆることについて運命があらかじめ決まっているということにはなりません。写真の未来を通過することは確定しているけれど、そこに至るまでのルートが複数あるということはありえます。

 だから、ナナの様々な細工が結局失敗したからといって、ナナのそうした行動がすべて無駄だったとは言い切れないわけです。同じ未来を通過するのであっても、そこに至るまでの最良のルートを選ぶことによって、ツネキチ殺害後の立ち回りやすさが変わってくるということもありえますから。まあ実際には、ナナの今回の事前の行動が未来に何か良い影響を与えたかというとそんなこともなさそうですが……。

好きポイント

 大久保瑠美さんの表裏の演じ分けは今回も光っていました。特にキョウヤに「紳士として」と言う独白での笑い声がとても良かったです。また、「こっちの写真なのか」のところの演技は、普段の低音とはまた違った声で面白かったですね。今後は表と裏の境界が曖昧になってゆくような場面もあるかもしれないと思うと、その際の演技がどうなるのか楽しみです。

 また、「お前たちがそれを言うのか」のシーンはカッコ良かったです。キョウヤの「なんでもアリだな」という皮肉めいた台詞と表情に対して、ナナも同様のニュアンスで返すという、両者のライバル関係が象徴されているシーンですね。

 ラストの「なにか見ちゃいましたか?」については、ナナの顔のドアップからの引き、ナナの影が映るところなど、ホラー的演出も面白かったです。EDの入りとも重なって、引きとしてはとても強かったですね。

 あと、

  • 夜にツネキチの写真をチェックしてるナナの目に写真が映るシーンの目がきれい
  • 翌朝、「夜中におれを殺そうとしなかったの?」と言われたナナの前髪ファサァ

(どうでもいいですが、ツネキチの死に顔がめちゃくちゃ安らかなのは何なんでしょうね)