ひかりちゃんの悲観的絵日記

絵日記要素はあるかもしれないしないかもしれない。

『無能なナナ』アニメ第7話感想(原作ネタバレ無し)

 この記事はアニメ『無能なナナ』第7話の感想記事です。原作のこの先の展開のネタバレはありませんが、既にアニメ化された箇所に関する原作との比較コメントは含むのでご注意ください。

 『ナナ』の話ではないのですが、アニメの感想ってどういうスタイルで書くべきか迷うんですよね。どうしてもそれぞれのシーンにコメントを加えるという感じになるので、論述的な文章にはなりにくく、段落をきちんと分けて文章全体を構造化して……というやり方だとうまくいかない感があります。そんなわけで、今回は試みとして台詞を抜粋してそれにコメントをつけるというスタイルを採用してみようと思います。なお、台詞の書き起こしにおける漢字等の表記に関しては原作に準拠しています。また、発言キャラの名前を丸括弧()の中に記します。

シーンごとのコメント

聞きたくないですか? 好きだった男の子の天国からのメッセージですよ(ナナ)

 表の声に戻っていますが、そこはかとなくいやらしさが伝わってくる演技でした。原作だときれいなナナとゲス顔の中間のような表情が印象的でしたが、アニメでは構図が変更。

 結末を知っていると、ユウカはよくまあ自分にとって喜ばしいようなメッセージがシンジから送られてくると期待できたなという感じがします。ユウカにはこういう、自分にとって都合の良いように現実を歪めて解釈する傾向があるから、長年シンジの死体と人形遊びを続けてこられたわけで、また、能力の入れ替えに気づかなかったナナの読心能力はフェイクだと疑ってもよさそうなものなのに、それも考えないあたり、シンジの話になると盲目になってしまうということなのでしょう。

ナナを殺せって言ってますね(ナナ)

 かなり好きなセリフです。うまく言えないのですが、別に何も言わずに逃げても、単に「ばーか」などと言っても良い場面で、あえて「ナナを殺せ」というあたりが煽り力高いなあって思います。自分を追ってくるように仕向けるという狙いもあったのかもしれませんが。

 アニメの演出に関しては、このセリフの前にもう少しタメが欲しかったかなと個人的には思いましたが、尺の都合でしょう。『ナナ』のアニメは全体的に急ぎ足で、その割に原作のシーンはほぼカットされていませんが、そのぶんが犠牲になっている印象は受けますね。

やれるものならやってみなよ(ユウカ)

 原作だとユウカの挑発的な表情が描かれていましたが、アニメだとネックレスをつまみ上げる手のアップのみになっており、若干ニュアンスが変わっていました。アニメの方がユウカの余裕が伝わらないぶん視聴者へのミスリードにはなっていたかもしれません。

今はよけいなことを考えている場合ではない…!(ナナ)

 ナナが動き出す直前に目が右を向くのが好きです。

そういえばユウカのベッドの下にはツネキチのネックレスの他にも妙な小物が散乱していたな…(ナナ)

 ここからの一連の台詞、ナナがはっきりと口に出して喋っているのはなぜなんだろうと思います。別にアニメ特有の演出ではなく、原作でも明らかに声に出しているんですよね。ユウカに聞こえるようにわざと言っているのかとも思いましたが、この時点でのナナはユウカを嵌める策を思いついていないはずなので、単に不利な状況で精神的に不安定になっていたというところでしょうか?

逃げ隠れるだと…!?(ナナ)

 ツネキチ編の「運命に抗う」というモチーフに引き続き、今できる最善を尽くそうとするナナの性格が表れた台詞です。ただ、ツネキチのときとは違ってかなり追い詰められており、一度は「逃げ隠れる」という選択肢を考えてしまう心の揺らぎも描かれています。そんな逆境からでも奮起できるところがカッコイイですね。

ベッドの下見なかったの?(ユウカ)

 ナナがここのゾンビたちへの対策をどう考えていたかは謎ですね。日光でゾンビが活動停止するのか確かめたかったと言っていましたが、すると小屋の中のゾンビ自体には気づいていて、朝日によってゾンビたちが活動停止するのに賭けていたという可能性も考えられます(めちゃくちゃリスキーな気はしますが)。単純に気づいていなかったという線も濃いですが……。

くっそおおおーっ!!(ナナ)

 これは悔しがっている演技ですが、(大久保さんの)演技の演技が迫真でしたね。ナナがこういう叫ぶ系の台詞を吐いたのは初めてかもしれません。

そのネックレス外れそうだな(キョウヤ)

 ナナがピンチのときには何となくキョウヤが味方サイドっぽく見えるという不思議な構造。ネックレスがシンジの遺品ではないことを推理する際にナナが根拠としたのもこのことでしたが、キョウヤとナナで注目する点が似ていることを示す、地味ながら良いシーンですね。

ずっとそこにいてチャンスをうかがってたんでしょ?(ユウカ)

 別にナナが仕込んだわけでもなく、たまたま小屋にいただけのナナ似のゾンビ。アニメで色つきで見ると他人の空似とは思えないくらい(髪が)似ていますね。

どう思う シンジ?(ユウカ)

 背負っているシンジに向ける恋する目とその後の「殺してやる…」の目のギャップが印象的。

いい朝ですね ユウカちゃん(ナナ)

 前半から後半にかけて声のトーンが変わっていく演技が好きです。ちなみに紫がかっている空がきれいで本当に良い朝。

どんな能力を使ったの…(ユウカ)

 ここからのネタバラシシーンは若干間延びしているように思いました。まあ原作からしてそうなので仕方ないのですが、敵同士で答え合わせみたいな会話をしているとどうしても緊張感が薄れる感じはあり、アニメだとそれが結構目立つ気がします。ただ、演出上のことはさておき、ナナとしては、抜け目の無さをアピールしてユウカの戦意を挫く意図があったのかもしれません(この時点ではまだユウカを生かす選択肢があったかもしれない)。

いやあああ!!(ユウカ)

 迫真の叫び。どうでもいいですけど、視聴者の視点からも完全に分からないようにテストの切れ端を袖の中に隠したナナはマジシャンになれそうです。

わたしは猫が好きだ 犬は二匹もいらない(ナナ)

 やっぱり前回の猫助けは本気だったのかなと伺えるところ、犬(ミチル)を少しかわいがっている感じがするところなど、色々と味わい深い台詞です。

飲み物はどこに置いていたんだ?(ナナ)

 ここからの一連の指摘を聴いて思うのは、ナナは人の話をよく聴いて憶えているなあということです。ベッドの下の遺品に気をとられて聴いていないようにも見えましたが、あの危機的な状況で一見どうでもいいユウカの惚気(妄想)話を矛盾点に気づくくらいちゃんと聴いているナナはすごいなと思います。

 前回の記事でも書きましたが、私は人の話をこういうレベルでちゃんと聴くのはすごく苦手です。コメントを見ていると、原作未読と思われる視聴者の中にも前回の話の矛盾点に気づいている人がちらほらいてやるなあと思いました。

驚いた もっと第二ボタンだとかそういうロマンチックな物かと思っていた(ナナ)

 ナナの「ロマンチック」のイメージ。遺品として第二ボタンを期待して、テストの切れ端を見て驚くあたり、ナナは人間観がまだそんなにスレていないですよね。

何が違うんだ このストーカーめ!(ナナ)

 とても良い声でした。

ああもっとなにか盗んでおけばよかったんだ…

 「ああ」のところのエッジの効いた?声が良かったですね。富田美憂さんというと、『ガヴリールドロップアウト』のガヴリールや『となりの吸血鬼さん』のソフィーのイメージがあり、こういうダークなキャラは初めて見たので新鮮でした。特にこの台詞が印象的でしたが、今回の富田さんの演技は全体的にすごく良かったです。

もしわたしの推理がことごとく的はずれでユウカが善人だった場合助けてやろうとでも…?

 前回の記事で書いたように、ナナは徐々に殺害対象が殺すに値するかどうかを気にし始めています。作中きっての善人として描かれているナナオを殺す際にはほとんどためらいが無かったのに対し(あのときはナナ視点ではなかったので細かいことは分かりませんが)、今回明確にユウカを試すようなことをしたのは、島での生活を経て能力者の実態を見てきたことによる心境の変化があるでしょう。また、森のゾンビの件によって(無自覚的にではあれ)「委員会」への疑念が生じたというのもあるかもしれません。

全体的な振り返り

 ナナの仕掛けたトリックが上手くいくことにどこまで説得力を感じるかや、ユウカの本性に関する伏線の張り方についてなど、賛否あると思いますが、個人的にはネクロマンサー編はすごく好きです。何というかナナが頑張っている感じがいいですね。ナナは圧倒的な頭脳で敵を出し抜いてドヤるヒロインではなく、不利がデフォルトの状況で身体を張って泥臭く能力者たちに食らいついていくところが魅力だと思います。

 ツネキチやユウカは向こうからナナに襲い掛かってくるタイプの能力者でしたが、結局無能力者のナナに殺されてしまったのは、人を殺すのに躊躇が無いかどうかという、覚悟や本気度の違いが大きいですよね。ツネキチも妙に正当防衛ということを気にしているようでしたし、ユウカにしても、最初にナナを捕らえた時点で殺していれば勝っていたのに、当初はクラスの皆の前でナナを断罪するという方に考えが行っていました。能力者を殺すのが最優先事項であるナナに対し、島の生徒たちにとっては人殺しは非日常的でとてもリスキーなことです。こうした意識の差が、普通に考えれば圧倒的に不利なはずのナナが能力者たちに勝ち続けられている要因なのではないでしょうか。

 また、ユウカというキャラも面白かったですね。ユウカは渋沢やツネキチに比べて内面的な掘り下げが大きく、これまでの能力者の中では断トツの狂人かつ悪人でした(放火殺人を犯しているので法的な意味でも非常に罪が重いです)。こういうキャラを敵として出すことで、同じく極悪人のナナも何となくダークヒロインっぽくなりますね。(ところでユウカがシンジを殺したと思われるのは5年前とのことでしたが、するとユウカの年齢を高く見積もって18歳としても、13歳(中1)の頃の話ということになりますよね。絵的にキャラの外見があまり現在と変わらないようにも見えたので、本当はもっと最近なのではとも思いますがどうなんでしょう。)

 そういえば、EDのBBQの絵は、ナナが誰も殺さないという選択をしていたらありえたのかなとも一瞬思いましたが、ナナが島に来るよりも前にユウカがシンジを殺しているので、あの幸せな世界の可能性は物語開始の時点で既に閉ざされているんですよね。ありえた可能性というよりはナナの見た夢・願望(?)といったところでしょう。

 今週のファンアートはまだ描いていません。おそらく後で追記してこの記事にアップすると思いますが、とりあえずは感想文を早く上げることを優先します。ネタが思いつかなかったのでこの回に関する絵は無しにします。