ひかりちゃんの悲観的絵日記

絵日記要素はあるかもしれないしないかもしれない。

小説コンプレックス

 ツイッターでもちょいちょい言っているが、私は小説を読むのがものすごく苦手だ。人生で通読できた長編小説は数えるほどしかない。活字の本を読むの自体が苦手という話もあるのだが、新書やハウツーはサクサク読めることが多い。他方で小説形式の本になると比較的読みやすいとされている種類のノベルでも全然読めなくなる。

 こういうことを言うと「論説文は読めるけど小説読めない私って異端?w」という謎イキリに見えるかもしれないが、割と真面目にコンプレックスなんである。自分がフィクションとか興味ないんでというタイプの人間なら気にしなくてもよさそうだが、私はアニメやマンガなどはよく観るほうだし、物語創作的なこともやりたいと思っているので、小説の読めなさは色んなところで意識してしまう。たとえばアニメやマンガを通じて興味をもった作品の原作がラノベや小説だったとき、原作も読んでみようかなという気持ちになる。しかしほとんど挫折する。また、創作のための物語論のような本を読んでいると小説の例がいっぱい出てくる。当然引用元作品を読もうとしても失敗するし、なんなら引用文を読むこと自体にひどい困難を覚える。

 何がそんなに難しいのかというと、一言で言って、小説の文章を一読しても内容が頭に入ってこないことが多いのだ。私は英語を読むのも苦手なのだが、英文を読んでいると、知っている単語しか出てこないし文法的にも分からないところなどないはずなのに、何を言っているのか分からないという経験をすることがよくある。そういう場合、何度か読み直して落ち着いて考え直してようやく内容がとれる(いわゆる「目が滑る」現象)。それと同じようなことが日本語の小説でもよく生じる。難しい言葉が使われているわけでもなく、たとえば自室のソファでペットボトルの水を飲んでいる*1といった、それ自体理解が難しいとは思えないようなシーンの描写においても、何を言っているのか分からないということが頻繁に生じる。そのため、ちゃんと読もうとすると読書スピードがたいへん遅くなる。かといって読み飛ばそうとすると話についていけなくなる。こうして心が折れてゆき、読書に挫折する。

 さらにタチが悪いのは、私は小説が読めないくせに、小説っぽいものをいくつか書いてきたという点だ。これは本当にタチが悪い。こうしてグダグダ書いていることからも分かるように、私は文章を書くこと自体には抵抗がない。ストーリーさえつくれれば、普段の文章を書くノリで小説っぽい体裁のものはできてしまう。ただ、私は読書量が圧倒的に少ないので、そもそも小説の何たるかを分かっておらず、そのようにしてできたものは小説の形式を模した小説ならざる何かなのだと思う。

 ツイッターで言っているように、私が描きたいのは本来マンガであるが、それなのにマンガに関してはろくな完成作品がなく、曲がりなりにも形にしたものとしては小説のほうが圧倒的に多い。これは身もふたもないことを言えば、自分にとって絵を描くことよりも文章を書くことのほうがハードルが低いからだ。

 サブカル寄りの創作界隈はこの話題でよく荒れる*2。絵が描けないから小説を書くというようなことを誰かが言えば、小説ナメてんのかと誰かが怒る。絵描きは簡単に見てもらえていいよな的なことを小説を書く人が言えばやはり荒れる。要は小説はマンガの代替物ではないし、創作物としてそれが乗り越えるべきハードルもマンガとは異なるというわけだ。私もそう思う。

 しかし、事実として、ある物語の構想があったとき、私にとってはそれを小説もどきにすることのほうが、それをマンガにすることよりも容易だ。出来はともかく、単に物語の形式をしたものを何らかの形にするということが目標であるなら、私は小説を選ぶべきだろう。

 これは単に、私は小説を読むことが苦手であるけれども、書くほうに関しては、マンガを描くことに比べれば適性があるということなのだろうか。今のところそうは思わない。私は読書量が少ないので、小説における文章表現が何を目指すべきなのか分かっていない。こういう表現は素敵だなとか、こういう感じの文章を書きたいとか、そういったイメージが全然ない。私が小説もどきを書いたときにやってきたのは、別のところでつくった物語を、自分が小説っぽいと思う形式に沿って書き下すという、かなり機械的な作業であった。これに対してマンガに関しては、技術さえ足りていればやりたいと思う表現がいくらでもある。この意味で、やはり自分はマンガのほうを描くべきなんだろうと思う。それともやはり「いや曲がりなりにも完成させられる小説に対してマンガは何ひとつ完成させられないんだから小説のほうがまだ見込みあるだろ……」ということになるのだろうか。

 まとめると、私は小説が読めないことに教養コンプレックス的なものを感じていて、さらに、創作に際しては小説が読めないのに小説を書いていいのかという悩みがあるという話であった。まあ別に私が小説を書いても「自分は小説を読まないくせに!」と石を投げられるわけでもなく、単にできの悪いものができ上がるだけであるから、書くことにひどい困難を覚えないのであれば書けばよいのでは、とも思う。しかし物語のネタをいったん小説にしてしまうとマンガにするモチベが下がりそうで怖いというのもある。うーん……。

*1:これは私が例としてでっちあげたシーンで、特定の小説が念頭にあるわけではない。

*2:これは私が身をもって体験したことというよりは、ツイート検索などで人様のツイートを眺めていて感じたことである。