ひかりちゃんの悲観的絵日記

絵日記要素はあるかもしれないしないかもしれない。

音楽を聴かない

 中学校に入ったあたりから、周りの人たちがアイポッド?やウォークマン?で音楽を聴き始めました。「え、みんなそんなに音楽に興味あったの」と、かなり戸惑った覚えがあります。歩くときにもイヤホンをしている人が多く、一気に「三度の飯より音楽が好き」な人たちの世界に来てしまったかのようでした。

 私自身が音楽を全く聴かなかったかというと、そんなことはありません。私は小さい頃からヴァイオリンをやっており、中学ではピアノも始め、いわゆるクラシック音楽をそこそこ聴いていました。でも、そうだからとて、私がみんなと同じように音楽を聴いているという感じはしませんでした。

 小学校までは全然音楽を聴かなかったような人でも、急にギターを始めたりして、「好きなアーティスト」をもち始めました。「レミオロメン」「ゆず」「BUMP OF CHICKEN」「オレンジレンジ」などの名前を憶えています。私はそういうアーティストをそもそも全然知らなかったので、疎外感を覚えました(例外的に「オレンジレンジ」の曲はアニメで知っていました)。アニメから「アリプロ」を知って(「ローゼンメイデン」や「コードギアス」の歌で有名なアーティストです)、それなりに好きになり、これで私も「好きなアーティストができた」と思ったのですが、やっぱり何か違います。カラオケで「3月9日」を歌っている人たちの仲間になれた気はしませんでした。

 中学から高校にかけてカラオケに行くようになり、周囲との差を感じる機会は増えました。周りの歌っている曲をほとんど知らないのはまあいいとして、私の側は何とかみんなの知っている曲を歌わなきゃと思い、井上陽水の「少年時代」とか「ポケモン」の曲を歌ったりしてなんとかやりすごしているつもりでした。以下は少し話がそれるのですが、ある日のカラオケで、誰かが「最後はみんなの知っている曲を入れたから、みんなで歌おう」と言いました。何を入れたんだろうと思って構えていると、「ワンピース」の「ウィーアー!」が流れました。私は知らなかったので(「ワンピース」の主題歌だと知ったのも後のことです)口パクで歌っているふりをしたか、周りに合わせてその場で適当に歌ったかでした。

 もうひとつエピソードを紹介すると、高校に入ったばかりの頃、中学時代の同級生のライブに行く機会がありました。それほど仲のいい相手ではなかったのですが、友だちの友だちみたいな形で、人に誘われて行きました。ライブに行くと何やらみんな身体を揺らしたりして盛り上がっているのですが、私はどう振舞えばいいか分からず、適当に周囲の動きを真似していました。たぶん奇妙な動きになっていたと思います。つらかったです。

 高校の終わり際に転機が訪れました。うちの高校は文化祭・体育祭の後に後夜祭という打ち上げみたいなイベントがあり、そこでは有志が漫才やバンドなどの出し物を繰り広げます。私はある縁から軽音部の演奏にヴァイオリンで加わることになりました。曲は「いきものがかかり」の「気まぐれロマンティック」で、さすがに自分も演奏に加わった経験があるとなると曲に対する理解は深まり、私のカラオケレパートリーに同曲が加わりました。「いきものがかり」の曲を歌えるというのは何だかみんなの仲間に入れた気がしました。それから私は「私だってイマドキの曲を知っているんだぞ」と、何かあるたびに「気まぐれロマンティック」の話をしました。まあむなしかったです。

 あれから十年以上が経ち、もう好きなアーティストの話題で盛り上がるみたいな場面に出くわすことも、カラオケで周りに合わせようとビクビクすることも減ったのですが、いまだに私は「好きなアーティスト」はもてずにいます。自己紹介をするとしたら「音楽は全然聴かないです」と言うことになると思います。