ひかりちゃんの悲観的絵日記

絵日記要素はあるかもしれないしないかもしれない。

自転車で遠くまで行こう

 小6のとき、クラスの友だちが自転車で隣の市に行ったという話を聞いて、自転車ってそんな遠くまで行けるんだ、と思った記憶があります。今思うと隣の市への距離はせいぜい4kmといったところで、自転車どころか徒歩でも少し頑張れば行けてしまうのですが、小学生の私には市外への移動には電車を使うものというイメージがあったのです。

 ところが中学に入ってから、私の自転車移動に対する態度は激変します。多分友だちの影響でしょう。自転車で意味もなく遠くに出かけるようになりました。

 最初のうちは、目的地の無い自転車散策というのが多かったと思います。うちで友だちと遊んでいて、16時くらいになると外でも行くかーとなって、自転車でランダムに進路を取りながらぶらぶらします。中学生の生きている世界は狭く、今よりずっと地理感覚もなかったため、すぐに道に迷います。そういうときはとりあえず大きな道路を辿るなどして大まかに進路を取るべきだと思うのですが、中学生の私たちは「金星が見えるから西があっちで……」などと、東西南北ベースで行く道を決めており、当然なかなか帰路にはつけませんでした。

 当時の中学生が携帯電話(ガラケー)を持っていなくても普通だったのに対し、私は比較的早くからケータイを持たされていたのですが、そのケータイには今のGoogle Mapのような便利機能はなく、代わりに現在地の大まかな住所が分かるというよく分からない機能がありました。それでちょっと進んでは住所の変化を確認して、目的地から離れただの近づいただの言って、進路を考えていました。住所を見てもそこがどこだか分からないのであまり役には立ちませんでしたが。

 ある日、例のごとく友だちとわが家で遊んでいて、ふと、「川を下って行ったら海に着くのかな」という話になりました。うちの近くには多摩川という河川があり、川は海に注いでいるはずだから、それを辿って行けば海に行き着くはず。そう考えて、もう14時とかだったと思いますが、チャリ(自転車のことです)で漕ぎ出しました。

 今の視点から述べると、多摩川は実際海に注いでおり、河川敷をずっと下流へと行けばたしかに海に着きます。うちから河口まではだいたい40kmくらいで、スポーツタイプでない私の自転車では3時間ちょっとくらいかかります。しかし、当時はそんな知識も朧気で、そもそも本当に海に着くのか分からないまま私たちは進みました。

 結論としてはほぼ河口に着いたのですが、私たちを待ち受けていたのは空港でした。世界のことを何も知らない私たちは「成田空港? でも成田って千葉だよね? そんな遠くまで来たの?」などと騒いでいました。成田ではありません。羽田です。多摩川の左岸河口には羽田空港があるのです。霧が晴れたら……というか、かなり唐突に予想外の場所に着いてしまって、私たちは大変驚きました。

 それからはつつがなくわれらが街へと戻り、家に着いたのは21時ごろでした。川沿いということもあってほとんど道には迷わなかったのですが、意外にもわが街の隣街で唯一迷いました。ともあれ無事に帰ってこられて何よりでした。

 今日述べたようなことを思い出しながら思うのは、中学時代は世界観が狭かったなあということです。私は地元の中学に通っており、一部例外を除いて電車なども使うことが無かったため、本当に徒歩圏内で生きていました。それがたまに自転車で遠いところに行ったときの、頭の中の地図みたいなもの?がどのような状態だったのか。電車で1時間半かけて大学に通うようになって、東京の地理についてそれなりのイメージをもつようになった今からしてみると、何だかはかりしれないものがあるように思います。

 ちなみに当時の自転車は今でも使っています。あれから多摩川下りは追加で2回、多摩川上りも1回やりました。またそのうちどこか遠くへ行きたいと思います。